東京でお部屋探しを始めた方から、本当によく聞くお話です。たしかに「掲載されているのに借りられない」が続くと、騙されている気分になりますよね。
でも、最初にいちばん大事なことをお伝えします。
🍀 最初に知ってほしい結論
「もう決まりました」の多くは、おとり物件ではありません。東京の賃貸は物件の動くスピード(流動性)がとても速く、サイトに掲載されている間にも、どんどん申し込みが進んでしまうのです。
人気の物件は掲載当日〜数日で申込が入ることも珍しくありません。一方で、サイトからの情報の取り下げ・更新には数日のタイムラグがあります。この「時間差」が、"載っているのに借りられない物件"を生む一番の正体です。
スーモやホームズといったポータルサイト自体は、おとり物件の排除にかなり力を入れています。それでも「決まりました」が多発するのは、悪意ではなく、市場のスピードに掲載情報が追いついていないから。まずはこの前提を押さえておくと、お部屋探しのストレスがぐっと減ります。
この記事では、①なぜそんなにスピード勝負になっているのかを公的データで確認し、②それでも存在する「本物のおとり物件」の見分け方、③スピード市場で後悔しないための準備、の順にやさしく解説します。
1. 東京の部屋は、いまどれくらい「争奪戦」なのか
「決まるのが早い」と言われても、ピンと来ないですよね。数字で見ると、いまの東京はこんな状況です。
つまり、部屋は増えていないのに、借りたい人は毎年増え続けている。とくにワンルーム・1Kは、若い単身者が集中するのに供給が追いつかず、いちばん競争が激しい領域です。
ちなみに一人暮らし向けの平均募集家賃は前年比+10%超のペースで上がっています。「先輩から聞いていた相場と全然違う…」と感じるのは、あなたの感覚がおかしいのではなく、この1〜2年で相場そのものが動いたからです。
💡 ちょっと補足:住んでいる人は気づきにくい
総務省の消費者物価指数では、東京都区部の民営家賃は前年比+1.6%程度。「あれ、そんなに上がってない?」と思いきや、これはすでに住んでいる人の家賃(更新時は据え置きが多い)を含んだ数字です。値上がりを直撃するのは、これから新しく借りる人だけ。だから周囲の相場感覚とズレるんです。
2. 「掲載中なのに決まってる」が起きる仕組み
スピード勝負であることに加えて、賃貸募集の仕組みそのものにも「時間差」が組み込まれています。
理由① 募集開始のとき、まだ前の人が住んでいる
賃貸の募集は、いまの入居者が「◯月に退去します」と予告を出した時点でスタートします(退去の1〜2か月前が一般的)。つまり募集中の部屋には、まだ前の人が住んでいるんです。
内見できないのは意地悪ではなく物理的な理由。そして条件の良い部屋は、前の人が退去する前に次の入居者が決まってしまいます。
理由② 申込から掲載終了までにタイムラグがある
申込が入っても、審査中は掲載が残っていることがありますし、複数のサイトに載せている場合は取り下げ作業にも時間がかかります。「サイト上は募集中、実際は申込済み」という状態が構造的に発生するわけです。
理由③ 1〜3月は、1年分の需要が一気に来る
就職・進学・転勤が重なる1〜3月は、公開直後から問い合わせが殺到し、内見当日に「先ほど別の方の申込が入りまして…」ということも日常茶飯事。この時期の「ちょっと考えます」は、残念ながら「他の方に譲ります」とほぼ同じ意味になってしまいます。
理由④ 「仮押さえ」という制度は存在しない
意外と知られていませんが、賃貸に「仮押さえ」はありません。物件を確保できるのは申込書を出した人だけです。「1週間キープ」はできないルールなんです。
3. とはいえ「本物のおとり物件」もゼロではない
ここまで「多くは誤解」とお伝えしましたが、残念ながら、成約済み・存在しない物件を客寄せ目的で掲載し続ける本物のおとり広告も一部には存在します(宅建業法などで禁止されている違反行為です)。こんなサインが重なったら注意してください。
- 相場より明らかに安いのに、駅近・築浅・好条件がそろいすぎている
- 掲載写真が古い・少ない・他の物件と使い回されている
- 物件名や住所を教えてもらえない
「この物件、まだ空いてる?」もLINEでどうぞ
気になる物件のURLやスクショを送っていただければ、空室状況を確認してお返事します。
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4. スピード市場で勝つカギは「先行申込」
「まだ人が住んでいて内見できない部屋」を確保する方法として、2つの制度があります。この違いだけは必ず覚えて帰ってください。
| 先行申込 | 先行契約 | |
|---|---|---|
| やること | 内見前に申込だけ入れて、審査を先に進める。退去後に内見してから最終判断 | 内見せずに契約まで完了させる |
| キャンセル | できる(見てイメージと違えば辞退OK) | できない(解約扱いで違約金の可能性) |
| おすすめ度 | ◎ まずはこちらを確認 | △ 慎重に |
初めての東京のお部屋探しなら、気になる物件が内見できないときは「先行申込はできますか?」と聞くのが正解です。順番待ちの列に並びながら、実物を見てから決められます。
※先行申込は「住む意思が強い人」のための制度なので、気軽なキープには使えません。また、内見なしで即契約する人(先行契約)が現れると順番が入れ替わることもあります。
内見できないときのチェックリスト
内見なしでも、確認すべきことを押さえればギャンブルにはなりません。
- 室内写真のチェック
- 周辺の騒音源 (幹線道路・線路・飲食店など)
- 契約が「普通借家」か「定期借家」か (定期借家は更新がなく、期間満了で退去になる契約です)
Googleストリートビューで駅からの道のりを歩いてみる、自治体のハザードマップを見ておく、というのも自分でできる有効な確認です。
また、内見できない物件でも、東京に立ち寄るタイミングがあれば、物件の周辺環境や最寄り駅までの距離・駅周辺の様子だけでも見ておくのがおすすめです。実際に住んだときのイメージがぐっと湧きやすくなります。
5. やっておくと入居がスムーズにいく3つの準備
いまの東京で大事なのは「良い部屋を探す時間」より、「良い部屋に出会った瞬間に動ける準備」です。
① 審査書類を先にそろえる
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 収入がわかるもの(源泉徴収票・給与明細・内定通知書・在学証明書など)
- 連帯保証人または緊急連絡先の情報
これが手元にあるだけで、申込が1〜2日速くなります。スピード市場ではこの差が決定的です。
② 予算は「家賃」ではなく「総額」で考える
初期費用は一般的に家賃の4〜6か月分(敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・保険・保証会社など)。ここを見落とすと、いい部屋に出会っても踏み切れません。具体的な金額は、コラム「初期費用の目安」で家賃10万円の部屋を例に計算しています。
③ 「譲れない条件」を3つだけに絞る
条件を10個並べると、東京では該当0件になります。コツは、あとから変えられないもの(立地・駅距離・階数・方角・防音性)を優先し、あとから工夫できるもの(内装・設備の新しさ・収納)は妥協候補にすること。判断が一気に速くなります。
💡 「4〜8月ならゆっくり探せる」は、もう昔の話に…
以前は、4〜8月になると物件の動きが落ち着き、引っ越しまでゆっくり探すことができました。でも、現在はそうでもありません。
東京への一極集中に加えて、海外から移住や仕事で来られる方の流入も増えているため、よほど人気のない物件を除けば、時期を問わず早く決まっていきます。
焦らずに物件探しをしてほしいのが本音ですが、物件の数に対して東京へ引っ越して来る人の数が多く、なかなかゆったり探すことを許してくれない状況が続きそうです…。
まとめ:「おとり」を疑う前に、市場のスピードを知ろう
- 「もう決まりました」の多くは、おとりではなく流動性の高さと掲載タイムラグが原因
- ただし本物のおとり広告もゼロではないので、見分けサインは覚えておく
- 内見できない物件は「先行申込」で押さえるのが基本
- 書類・総額予算・条件3つの事前準備で入居がスムーズに
東京のお部屋探しは「探す市場」から「準備して待ち構える市場」に変わりました。でも、仕組みを知って準備さえしておけば、納得のいく一部屋はちゃんと選び取れます。
ひとりで戦わなくて大丈夫。
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「この条件で探せる?」「初期費用いくら?」——ひとことからでOKです。
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出典
公的統計
- 建築着工統計調査報告(令和7年計)(国土交通省)
- 住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果(総務省統計局)
- 2020年基準 消費者物価指数 東京都区部 2026年6月分(総務省統計局)
民間の市場調査
- 全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2026年5月)(アットホーム)
- マンション賃料インデックス(2025年第4四半期)(三井住友トラスト基礎研究所・アットホーム)
- 2025年度「定期借家物件」の募集家賃動向(アットホーム)
- 【2026年3月版】東京23区賃貸マンション市場(三井不動産レジデンシャルリース)
- 首都圏の新築マンション市場動向(2025年)(不動産経済研究所)
掲載した数値は各機関の公表時点のものです。市場環境は日々変動するため、実際のご検討にあたっては最新の公表値と個別物件の条件をご確認ください。「平均家賃」は統計上の集計値であり、個別物件の賃料を保証するものではありません。